黒蔵地区の潜伏キリシタン関連遺品群
2018年08月06日付

読切
潜伏キリシタン時代の信仰具「馬小屋」発見

五島市増田町黒蔵地区・平山勇市さんのお宅で、潜伏キリシタン時代の信仰具「馬小屋」が発見されました。これは、一つの箱に「山伏の根付」「如来像」「役行者像」「東屋風建物の模型」「金属製の像」がセットとなって発見されたもので、潜伏キリシタン時代にこれらをイエス誕生の場面である「馬小屋」に見立てていたと考えられます。
この資料自体は、「納戸神(なんどがみ)」として、平成27年度に長崎歴史文化博物館で展示されました。納戸神とは、家々の納戸で祀られる神様のことです。

「新発見」とされた理由
この遺品群が単なる「納戸神」や「潜伏時代の遺物群」ではなく、潜伏時代の馬小屋としてワンセットで見立てられる遺品群である可能性があるためです。これらをセットとしてイエス誕生を物語る「馬小屋」のシーンに見立てられていたと考えられます。この資料により、潜伏時代のクリスマスという具体的な信仰のあり方が分かる、とても貴重な資料です。単独の像ではなく、木箱に複数の像を配置することでひとつの場面を表しているのはとても珍しい例です。

馬小屋に見立てられているといえる理由
これらの信仰具と一緒に「お誕生のオラショ」や暦などが発見されました。これらの中にクリスマスの準備期間を指す「あつべんとのどみいご(アドベントの日曜)」という記述があります。また、同じく文書群中に「おんたいやのおらしょ」「おんうまれなされた所」というクリスマスに関するオラショがあります。このことから、クリスマスに関する行事や知識が黒蔵地区のキリシタン組織に伝わっていた可能性があるといえます。

「馬小屋」について
これらの品は、イエス誕生のシーンに「見立てられた」と考えられているものであるため、実際に信仰に使われたという断定はできません。しかし、その配置からイエスの誕生の場面を表していると推測されます。それぞれの品は制作時期がバラバラで、潜伏期のいつ頃「馬小屋」としてのセットとなったかは不明です。入れ物となっている箱は品々を置いたときの寸法に合わせて作られているため、今後「箱」についても研究される予定です。

この「馬小屋」を保管していた平山さんについて
平山さんは、10年ほど前に同地区に住む知人からこれらの品を預かりました。平山さんは、「品物と一緒にあるのはオラショではないかと思い、5年ほど前から解読を依頼していた。品物も何かの役に立つのではないかと思いずっと保管していたが、『大きな発見』ということで、とても驚いている」と語られました。

黒蔵地区の歴史的背景
黒蔵集落は、寛政9年(1797年)に大村藩と五島藩との協議を受けて外海から移住した3集落の1つです。御用百姓の潜伏キリシタン集落であるといわれています。潜伏時代の遺品として、オラショ類をはじめ、今回確認した「馬小屋」や単体の蔵王権現などがあります。現在は、当時の信仰は受け継がれておらず、ほぼ全住民が神道に変わっています。いつ頃神道に変わったかは不明ですが、明治6年(1873年)の禁教高札撤去後しばらくはキリシタンとしての組織が維持されたと考えられています。

今回発見された「馬小屋」は、大浦天主堂キリシタン博物館へ展示されます。展示後は、黒蔵地区で展示公開することが検討される予定です。
大浦天主堂キリシタン博物館での展示
期間 平成30年8月11日(土曜日)~平成30年9月26日(木曜日)
場所 旧長崎大司教館2階展示室
電話 095-801-0707