災いを乗り越えて(カネミ油症事件について)
更新日:2019年6月22日
カネミ油症事件のおこり
いつ、どこで、どのようにしておこったの?
1968(昭和43)年夏ごろから、福岡県や長崎県を中心に奇病(きびょう)が発生しました。ひどい吹き出物や膿(うみ)をもった腫れ、つめの変形や変色、大量の目やに、手足のしびれ、疲
れやすいなど、さまざまな病状(びょうじょう)で病院を訪れる人が急増(きゅうぞう)しました。長崎県では、下五島(現在の五島市)に被害者(ひがいしゃ)が多く出ました。
原因は、カネミ倉庫製(そうこせい)の米ぬか油にまじったPCB(ポリ塩化(えんか)ビフェニール)やダイオキシン類でした。当初、約1万4,000人の人が被害をとどけ出ました。現在までに、そのうち1,900人余りのカネミ油症被害者(ひがいしゃ)として認定(にんてい)されています。
多くの被害者が、原因企業であるカネミ倉庫、PCB製造企業(せいぞうきぎょう)の鐘淵(かねがふち)化学工業、国などを、裁判所(さいばんしょ)に訴(うった)えました。これをカネミ油症事件といいます。
どんな症状があるの?
水俣病(みなまたびょう)の研究で有名な原田正純(はらだまさずみ)先生は、カネミ油症を「病気のデパート」と例(たと)えるほど、実にさまざまな症状(しょうじょう)があります。
事件のおきた当初は、強い倦怠感(けんたいかん)(疲れ)とともに大量の吹き出物や目やに、つめや歯茎(はぐき)の変色など、皮膚(ひふ)症状が主でした。特に、吹き出物は顔や背中、耳の後ろやおしりなど全身にできて、ひどい悪臭がしました。
そのうちに、髪(かみ)の毛が大量に抜(ぬ)けたり、視力(しりょく)が低下したり、耳が聞こえにくくなったりしました。また、脳梗塞(のうこうそく)で倒れたり、歯がぐらぐらして抜けたり、骨の変形や関節(かんせつ)の痛(いた)みで歩けなくなったりと、全身におよぶ疾患(しっかん)で苦しむようになりました。また、さまざまなところにガンができて、亡くなる患者(かんじゃ)が増えていきました。やがて、皮膚(ひふ)の黒い赤ちゃんも生まれるようになりました。カネミ油症は、まさに全身病なのでした。
被害者は、どんな苦労(くろう)をしたの?
PCBを含んだカネミ油は、1968(昭和43)年2月ごろから10月ごろ、主に福岡県の北九州市や長崎県の五島市で販売(はんばい)されました。そのため、五島市にはたくさんの被害者が出ています。
この油は、初め、米ぬか油を使った高級油として売り出されましたが、五島ではこの時期大安売りされたという話もあります。当時は、今のように道路が整備(せいび)されておらず、船便で運ぶのはいっそう不便でした。そのため、人々は、近所で油を売る店も限られていましたから、「値段」や「それがどんな油か」などあまり考えずに、毎日の食卓に必要だからと買っていました。
カネミ油症関連年表
年代 | おもなできごと |
---|---|
明治14年(1881年) | ドイツでPCB合成法が開発される。 |
昭和29年(1954年) | 日本で初めてPCBがつくられる。 |
昭和43年(1968年)1月 | カネミ倉庫(北九州市)の食用米ぬか油の製造過程でPCBが混入。 |
昭和43年(1968年)2月から3月 | カネミ倉庫の「ダーク油」を配合した飼料により、西日本でニワトリが大量死した。 |
昭和43年(1968年)10月 | PCBが原因の大規模な食中毒が西日本一帯で発覚(油症の発生の確認) |
昭和45年(1970年) | 全国統一民事訴訟第1陣として、被害者が国やカネミ倉庫などを提訴する。以降、2陣から5陣などが順次提訴していく。 |
昭和59~60年(1984年から1985年) | 一部の訴訟の下級審で国の賠償責任が認められ、該当する原告に国の仮払金が支払われる。 |
昭和62年(1987年) | 最高裁で原告の逆転敗訴の可能性が強まり、第1陣が国への訴えを取り下げる。以降、他の原告団も順次、国への訴えを取り下げる。 |
平成9年(1997年) | 国が一斉に仮払金返還の調停を申し立てる。 |
平成14年(2002年)6月 | カネミ油症被害者支援センター(YSC)設立。 |
平成16年(2004年)9月 | 油症認定の診断基準にダイオキシン類のPCDFの血中濃度が追加される。 |
平成17年(2005年)8月 | カネミ油症五島市の会が発足する。 |
平成18年(2006年)5月 | 自民・公明の与党プロジェクトチーム(PT)が発足する。 |
平成19年(2007年)4月 | 与党PTが被害者救済策をまとめる。 |
平成19年(2007年)6月 | 仮払金返還免除の特例法が国会で成立する。 |
平成20年(2008年)7月 | 国による油症認定患者の健康実態調査が始まる。 |
平成24年(2012年)9月 | カネミ油症患者に関する施策の総合的な推進に関する法律が成立する。 |
カネミ油症について、もっと調べてみたいな?
- 原因となったPCBやダイオキシン類とは、どんなものなのだろう?
- 被害者の話を聞いてみたいな?
- 被害者は、どのように災いを乗り越えていったのかな?
- 五島市は、どのような支援をしているのだろう?