平成16年度低コスト肉用牛生産特別事業の補助金を受けて整備された施設及び設備の未使用に関する措置請求
更新日:2019年3月17日
公表日
平成30年2月9日
結果
棄却
監査結果の詳細
請求日
平成29年12月12日
請求の要旨
請求の内容
農協に対して交付した補助金5,636,000円の返還を請求すること。
請求の理由
平成16年度低コスト肉用牛生産特別事業として、ごとう農業協同組合が野々切町に牛舎施設等を整備するため、市は、農協に対し長崎県肉用牛振興施設整備事業費補助金を交付した。
本件補助金の補助期間の満了は平成33年と考えられるが、本件施設は平成26年から補助金の交付の目的に反して使用されていない。これは補助金の不当な交付に当たるので、市は農協に対し補助金の返還を請求すべきところ、これを怠っている。
監査の結果
監査委員の判断
請求には理由がないと認め、棄却しました。
また、監査を行った中で、補助金に関する事務について是正すべき事項が認められましたので、市長に意見を提出しました。
判断の理由
ア.地方公共団体が交付する補助金について
地方公共団体は、地方自治法第232条の2の規定により、公益上必要がある場合に補助をすることができます。地方公共団体が同条の規定に基づいて行う補助は、これに対し行政処分的性質を付与する特段の法的な規制が加えられていない限り、原則として私法上の贈与に類するものであり、地方公共団体の長が行う補助金交付決定は、私法上の贈与契約の申込みに対する承諾と同視することができるから、交付決定は行政処分に該当しないものと解するのが相当であるとされています(名古屋地方裁判所昭和59年12月26日民事第9部判決)。また、市の補助金等の予算の執行に関する規則及び補助金交付要綱は、事務執行上の内部手続を定めたものに過ぎないから、これらに基づく補助金の交付決定は、地方自治法第242条の2第1項第2号所定の行政処分に当たらないとされています(東京高等裁判所平成元年7月11日第8民事部判決)。
したがって、行政処分的性質を付与する特段の法的な規制が加えられていない限り、補助金は「負担付贈与契約」とされ、「このような条件(負担)を守ったときには、この金額を補助する」という贈与契約を、市と補助事業者が対等な関係で締結したということになり、相手方が負担を履行しない債務不履行(事業遂行義務違反)があるときは、当該負担付贈与契約を解除しうるものと解すべきであります。
これを本件についてみると、市長は、平成16年度長崎県肉用牛振興施設整備事業費補助金交付決定通知書(平成16年12月2日付け五島市指令16農林第48号)において、市補助金規則第6条に定める条件(負担)、補助金返還(解除)となる事由等を明示していません。
イ.市は補助金の返還を請求すべきであるのに、これを怠っているとの主張について
市補助金規則第17条は、「市長は、補助事業者等が、補助金等の他の用途への使用をし、その他補助事業等に関して補助金等の交付の決定の内容又はこれに付した条件その他法令等又はこれに基づく市長の処分に違反したとき、又は交付除外対象であることが判明したときは、補助金等の交付の決定の全部又は一部を取り消すことができる。」と規定しています。
補助金の交付決定の取消しについては、一般に、補助金等の交付決定に、補助金等交付規則に規定する補助金等の交付の決定の取消しの事由が認められるときであっても、長としては、必ず当該交付決定を取り消さなければならないものではなく、補助目的達成の可否について補助関係の全過程を通じて総合的に判定し、補助金等交付の所期の目的を達成することが困難となったと認められるときに初めてその取消権を行使すべきものと解するのが相当であるとされています(さいたま地方裁判所平成17年6月1日第4民事部判決)。
これを本件についてみると、本件補助金の補助事業者は農協であり、農協が本件施設を整備し事業を委託して実施しています。本件事業受託者が使用しなくなり補助事業が中断となったものの、農協は周辺地区の畜産農家に本件施設の利用を促しており、一時的ではあるが本件施設を利用させています。また、県及び市と連携して新規参入や規模拡大を目指す事業者に対し本件施設を紹介するなどして事業継続に向けて取り組んでいます。さらに、平成29年10月に本件施設の土地に係る所有権は、競売により移転しましたが、農協は、平成30年1月6日に弁護士を通して現土地所有者に対して事業継続の意思を確認しています。
一方、市においては、本市の畜産振興を図るうえで、新たに施設を整備するよりも現にある施設を有効活用することが最善との判断の下、本件施設の利用再開に向けて、県及び農協と連携して新規参入を目指す事業者と協議を重ねていました。
以上のことから、補助事業者に事業中断という事実があるというだけで、補助金交付の所期の目的を達成することが困難になったとまではいえないから、現時点において、市が補助金の交付決定の取消権を行使せず、補助金の返還を請求しないことは、市長の裁量権の範囲内にあるというべきであります。よって、市長が違法又は不当に財産の管理を怠っているということはできません。
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