メニューにジャンプコンテンツにジャンプ
五島市 まるごとう

音声読み上げ

トップページ > 市政 > 監査 > 監査等の結果及び措置の状況 > 住民監査請求監査 > 補助金の返還に係る加算金を放棄する議案の議会可決の無効を求める措置請求

補助金の返還に係る加算金を放棄する議案の議会可決の無効を求める措置請求

更新日:2020年2月26日

公表日

令和2年2月21日

結果

棄却

監査結果の詳細

請求日

令和元年12月25日

請求の要旨

請求の理由

令和元年9月五島市議会定例会(以下「9月定例会」という。)に提出された長崎県肉用牛振興施設整備事業費補助金(以下「本件補助金」という。)の返還に係る加算金(以下「本件加算金」という。)を放棄する議案第114号権利の放棄について(以下「本件議案」という。)は、本件議案及び説明資料の放棄の理由において、市は十分な調査等を一切行わずに議案を提出し、経済土木委員会(以下「委員会」という。)で審査の下、本会議において可決された。委員会における審査において、補助事業の中止に伴う加算金免除に係る市の説明は、調査不十分による虚偽内容であり、議会で可決した結果は、市民にとって「やむを得ない理由」として看過することのできない問題である。

虚偽内容である理由は、次のとおりである。
ア  本件補助金に係る事業中止の理由は、ごとう農業協同組合(以下「農協」という。)と低コスト肉用牛生産実証展示事業に係る施設利用契約(以下「本件施設利用契約」という。)を締結した受託者(以下「本件事業受託者」という。)の失踪が最大の原因としているが、農協の代位弁済請求申請の決定日が、補助事業の中止となる。
イ  補助事業中止の要因は、農協及び行政の指導管理の怠慢が最大の要因である。
ウ  本件施設利用契約の第8項に原則として契約は解除しないものとするとしながらも、農協は本件施設利用契約を一方的に解除した。補助事業の残存期間は、連帯保証人が施設の利用継承を行う必要があった。
エ  農協は、本件施設利用契約の連帯保証人に対し、責任追及を全くしていない。

事業中止の最大の原因は、農協と市の法、規則、規定等の遵守違反による怠慢であり、放棄の理由とした市の見解は虚偽に当たり、加算金徴収の権利を放棄した市の行為は、事実上市に損害を生じさせている。

また、令和元年9月27日の9月定例会最終日の本会議における経済土木委員長(以下「委員長」という。)の報告及び質疑応答のやり取りについては、委員会では全くと言っていいほど議論が行われておらず、本会議において報告された内容は虚偽報告に当たる。虚偽内容の委員長の報告及び答弁は、議決を要する議案に対して可決無効と断定できる行為であり、議会としての責任を追及されても致し方ない。

請求の内容

農協に対し、本件加算金5,654,790円を請求し、納付させること。

監査の結果

監査委員の判断

本件請求には理由がないと認め、棄却する。

判断の理由

ア 本件補助事業の中止について

請求人は、いくつかの理由を挙げ、本件補助事業の中止に至った原因は虚偽内容であると主張しているが、本件補助事業の中止については、平成30年3月6日に提出された住民監査請求の監査結果(平成30年4月27日付け通知)の第3の2(2)から(4)までにおいて判断しているところである。

また、本件補助金の返還に当たって、農協の理事会において事業の中止及び補助金返還が決定された平成30年3月28日を補助事業中止の時期として長崎県知事から財産処分の承認を受けていることからも、補助事業の中止に至った原因は虚偽内容であるとの請求人の主張には理由がない。

イ 農協が本件施設利用契約に基づく連帯保証人に対する責任を果たしていないとの主張について

請求人は、市の説明が虚偽内容である理由として、農協が本件施設利用契約に基づく連帯保証人に対する責任を果たしていないことを挙げている。

しかしながら、本件施設利用契約に基づく連帯保証人の責任については、あくまで農協と本件事業受託者及び連帯保証人との間の問題であり、農協が連帯保証人に責任の追及をしていないことと本件加算金の免除との関連性は認められないから、請求人の主張には理由がない。

ウ 本件議案に係る委員会における市の説明は、十分な調査が行われず虚偽の内容であるとの主張について

請求人は、本件議案に係る委員会における市の説明は、十分な調査が行われず虚偽の内容であると主張する。そこで、市は、農協から本件加算金の免除申請を受けて調査を行っているか、委員会における市の説明に虚偽に当たる部分があるかについて検討する。

まず、市の農協に対する調査については、市は、農協から本件加算金の免除申請を受けて、当該申請書の「加算金の免除申請理由」の「外的要因」として記載された「本件事業受託者が失踪したこと」、「事業継続のため、本件施設近隣の肉用部会に利用を呼び掛けるとともに新規参入者や規模拡大希望者に対して、本件施設の紹介をするなど事業計画達成に努めていたこと」については、平成29年12月12日及び平成30年3月6日に提出された住民監査請求の資料で確認できたので改めて調査をしていないが、「平成29年8月に本件施設の土地が競売にかかり、新たな土地所有者との交渉を行いながら利用者を探していたが、土地所有者との折り合いがつかず、施設利用の見通しが立たなくなったこと」については、農協に対し調査を行っている。その結果、農協が土地所有者から請求された額は月額●円で、農協が依頼した不動産鑑定士の鑑定額の月額24,100円と比較すると、土地所有者から請求された額は不動産鑑定士の鑑定額の約20倍になっていることを確認している。また、市は、五島市行政財産使用料条例(平成16年五島市条例第81号)に基づき、標準的な雑種地の評価額から使用料を算出しており、その額は月額18,914円となっている。農協が土地所有者の請求額を支払うとなれば、この額を本件施設の使用者に請求することになるので、本件施設を借りる農業者を見つけるのは厳しく、土地所有者にも施設利用を断られたことで施設利用の見通しが立たなくなり、事業の継続が困難と判断し事業の中止を決定したことを確認している。

次に、委員会における市の説明については、1(3)エ(イ)a委員会における本件議案に係る市の説明についてに記載のとおり、農協の本件加算金免除申請の理由(1(3)ウ)及び上記の市が農協に対し調査して確認した内容と相違はない。

したがって、市は調査を行っていないとはいえず、また、本件議案について委員会において市が説明した内容に虚偽に当たる部分は認められない。

エ 本件議案については、委員会で議論が行われておらず、本会議で報告された内容は虚偽に当たるとの主張について

請求人は、本会議における本件議案に係る委員長報告及び質疑応答について、委員会では全くと言っていいほど議論が行われておらず、本会議において報告された内容は虚偽報告に当たると主張する。そこで、委員会において本件議案について議論がなされているか、本会議において報告された内容に虚偽に当たる部分があるかについて検討する。

委員会においては、1(3)エ(イ)b委員会における質疑及び結果についてに記載のとおり、加算金について権利を放棄する理由、本件事業受託者失踪後の農協の対応状況、本件施設利用料の支払状況、加算金の国県の対応状況、農協の帰責性等について質疑が行われている。また、本会議における委員長の報告及び質疑に対する答弁については、1(3)エ(イ)委員会における審査について及び同(ウ)a本会議における本件議案に係る委員長報告についてに記載のとおり委員会の審査の中で議論された内容である。

したがって、委員会においては、本件議案について議論がなされており、また、本会議で報告され、答弁された内容に虚偽に当たる部分は認められない。

オ 本件議案の議決は、裁量権を逸脱又は濫用した違法又は不当なものであるかについて

権利の放棄の議決について、判例は、地方自治法第96条第1項第10号は、普通地方公共団体の議会の議決事項として、「法律若しくはこれに基づく政令又は条例に特別の定めがある場合を除くほか、権利を放棄すること」を定め、この「特別の定め」の例としては、普通地方公共団体の長はその債権に係る債務者が無資力又はこれに近い状態等にあるときはその議会の議決を経ることなくその債権の放棄としての債務の免除をすることができる旨の同法第240条第3項、地方自治法施行令第171条の7の規定等がある。他方、普通地方公共団体の議会の議決を経た上でその長が債権の放棄をする場合におけるその放棄の実体的要件については、同法その他の法令においてこれを制限する規定は存しない。したがって、地方自治法においては、普通地方公共団体がその債権の放棄をするに当たって、その議会の議決及び長の執行行為(条例による場合には、その公布)という手続的要件を満たしている限り、その適否の実体的判断については、住民による直接の選挙を通じて選出された議員により構成される普通地方公共団体の議決機関である議会の裁量権に基本的に委ねられているものというべきである。もっとも、同法において、普通地方公共団体の執行機関又は職員による公金の支出等の財務会計行為又は怠る事実に係る違法事由の有無及びその是正の要否等につき住民の関与する裁判手続による審査等を目的として住民訴訟制度が設けられているところ、住民訴訟の対象とされている損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を放棄する旨の議決がされた場合についてみると、このような請求権が認められる場合は様々であり、個々の事案ごとに、当該請求権の発生原因である財務会計行為等の性質、内容、原因、経緯及び影響、当該議決の趣旨及び経緯、当該請求権の放棄又は行使の影響、住民訴訟の係属の有無及び経緯、事後の状況その他の諸般の事情を総合考慮して、これを放棄することが普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であって上記の裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たると認められるときは、その議決は違法となり、当該放棄は無効となるものと解するのが相当である。そして、当該公金の支出等の財務会計行為等の性質、内容等については、その違法事由の性格や当該職員又は当該支出等を受けた者の帰責性等が考慮の対象とされるべきものと解される(最高裁判所平成24年4月20日第2小法廷判決)と判示している。

したがって、債権放棄については、基本的に議会の裁量に委ねられるものであるから、債権放棄自体の是非を請求人の主張する点から判断するのではなく、議会の行為に裁量権の逸脱又は濫用があったかどうかを判断する事案であると考える。

これを本件についてみると、本件議案については、1(3)エ加算金免除に係る権利の放棄の議決についてに記載のとおり、市議会において質疑があって審議がなされ、債権を放棄することの適否が議決されるに至っており、議会による慎重な審議を経ることにより執行機関による専断を排除するという議会の本来の機能が果たされている。

また、本件について、債権放棄の議決の有効性についての判断枠組み(考慮要素)に照らしてみると、1 当該請求権の発生原因である財務会計行為等の性質、内容、原因、経緯及び影響については、本件補助金は、高品質肉用牛の低コスト生産を推進し、将来は地域内一貫生産を基本として生産基盤の拡大及び農業経営の安定を図り、牛舎建設等の実施による新しい肉用牛農家の確保に努め、地域における肉用牛の発展と振興に資することを目的として交付されており、本件補助金の返還に至った補助事業の中止に関する農協の帰責性については、農協に故意及び重過失は認められないこと。2 当該議決の趣旨及び経緯については、本件議決の趣旨は、本件補助金の返還に伴う加算金を免除するものであるが、本件補助事業が市における畜産振興の必要性の下、農家の農業経営の安定と生産基盤の拡大を図るため、農協が農家に代わって実施している事業であることから、加算金を免除することは、ひいては畜産の振興及び農家の経営安定等にもつながるものであり、一定の公益上の必要性が認められること。3 当該請求権の放棄又は行使の影響については、農協は既に補助金の返還に応じており、本件加算金を免除したことにより農協が不法な利益を得たわけではなく、また本件権利の放棄によって市の財政に及ぶ影響は限定的にとどまること。

以上のことから、本件議案の議決は、最高裁判所平成24年4月20日判決の判断枠組み(考慮要素)に照らしてみても、債権を放棄することが、普通地方公共団体の民主的かつ実効的な行政運営の確保を旨とする地方自治法の趣旨等に照らして不合理であって裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たるとは認められない。

カ 市長が本件加算金を免除したことは、違法又は不当な財産の処分に当たるといえるかについて

上記オ記載の最高裁判所判決によると、地方自治法においては、普通地方公共団体がその債権の放棄をするに当たって、その議会の議決及び長の執行行為という手続的要件を満たしている限り、その適否の実体的判断については、住民による直接の選挙を通じて選出された議員により構成される普通地方公共団体の議決機関である議会の裁量権に基本的に委ねられているとされている。

以上に記載のとおり、市長は、本件加算金の免除について、補助金規則第19条第5項の規定によりやむを得ない事情があると認め、9月定例会において権利の放棄の議決を経た上で、農協に対し加算金免除の通知を行っており、加算金の免除に関して手続的要件に瑕疵はないことから、市長が本件加算金を免除したことについては、違法又は不当な財産の処分に当たるということはできない。

キ 加算金の一部免除について

本件加算金については、全額免除という結果となっており、一部免除について議論がなされていない。

加算金の免除については、
ア  加算金の法的性格については、「補助金適正化法解説(小滝敏之著、全国会計職員協会発行)」によると、加算金が一般の契約解除に伴う不当利得返還の場合の法定利息5分(民法第404条)に比して、10.95パーセントと高い理由は、その原因となった義務違反が私法上の負担付贈与契約の債務不履行にとどまるものではなく、公法上の事業遂行義務に違反するものとして、十分制裁に値するものと観念されたからであり、加算金は単に原状回復に伴う利息返還債務としての性格をもつだけでなく、制裁的賦課金としての意義を合わせもつものということができるとされていること。
イ  本件補助金は県補助金を含めて交付され、また本件補助金とは別に国庫補助金を財源とする中央畜産会補助金が交付されているため、本件補助金の返還額を算定するに当たっては、補助事業の中止の時期を国及び県と協議する必要があり、平成30年4月20日の交付決定取消しから令和元年8月8日の返還命令まで長い時間を要していること。
ウ  本件補助金の返還金3,615,138円には、市から長崎県に対する返還金1,807,568円が含まれているが、この長崎県に返還する補助金については、長崎県から加算金を請求されていないこと。
を考慮すると、一部免除という方法も検討できるところである。

しかしながら、本件加算金の全額免除については、市議会及び市長の裁量権の範囲内であり、一部免除にしなかったことによって違法又は不当となるものではない。

このページに関する問い合わせ先

監査委員事務局 監査係

郵便番号:853-8501
長崎県五島市福江町1番1号(本庁舎)

直通電話:0959-72-6152
ファクス番号:0959-74-1994(代表)

このページに関するアンケート

このページの情報は役に立ちましたか?
このページは分かりやすかったですか?
このページは探しやすかったですか?

令和元年12月25日に提出された住民監査請求の監査結果を掲載しました