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玉之浦花き栽培施設譲渡の市場価格を算出し差額の返還を求める措置請求

更新日:2020年7月7日

公表日

令和2年5月26日

結果

勧告

措置状況公表日

令和2年7月3日

監査結果・措置状況

請求日

令和2年3月27日

請求の要旨

請求の理由

平成31年3月29日に売払人五島市長と買受人株式会社HPIファーム(以下「買受人」という。)との間で取り引きされた玉之浦花き栽培施設10施設(以下「本件施設」という。)を10円にて譲渡した行政行為は公正公平な手続きの手順を踏んでいないため無効と問題提起する。さらに公告もせずに一者に対し予定価格を提示し、随意契約にて譲渡された行為は公益性が一切認められない。

請求の内容

不動産鑑定士による本件施設の時価額を算出させ、市長に譲渡額との差額を市に返還する措置を講じること。

監査の結果

監査委員の判断

本件請求には一部理由があると認め、市長に対し次のとおり勧告する。また、監査の結果を踏まえ、監査委員として次のとおり意見を付す。

勧告

  1. 市長は、本件施設の譲渡額10円と不動産鑑定評価額1,680,000円との差額に相当する額1,679,990円を五島市に支払うこと。
  2. 市長は、1の措置を講じないときは、本件施設を減額譲渡したことについて、地方自治法第237条第2項の規定による議会の議決を経ること。
  3. 1又は2の措置は、令和2年7月26日までに講じること。

意見

(1)市有財産の評価について

五島市有財産評価委員会(以下「評価委員会」という。)は、建物の評価を行う場合、評価基準に基づき評価を行うこととしているが、市内には、近傍同種の公共施設がなく、取引事例を参考にした評価を行うことが困難であることから、公会計モデルによる評価となっている。しかしながら、耐用年数を経過したものについては、備忘価格(残存価格なし)となり「適正な対価」となっていない場合がある。したがって、建物の適正な価格を算出するに当たっては、不動産鑑定評価を依頼すること等により、適正な価格(市場価格)となるよう評価の方法を見直されたい。
また、評価委員会の委員については、他の自治体においては不動産鑑定士を委員としているところも見受けられるので、附属機関の専門性等を考慮して、委員の選任に当たっては、不動産鑑定士など外部の学識経験者を中心とする構成とすべきである。

(2)温泉源について

温泉源については、市内に複数のものが存在するが、本件温泉源を除き財産台帳に登載されていないので、その実態を把握し、速やかにその管理及び使用料について検討されたい。
また、温泉権は物権であるとされていることから、財産に関する調書について整備されたい。

判断の理由

1   本件施設の譲渡契約を随意契約の方法により締結したことは、違法又は不当な契約の締結に当たるといえるかについて

市は、本件譲渡契約の締結に当たり、その契約の理由として、買受人が平成28年7月に玉之浦花き栽培施設利用組合(以下「利用組合」という。)に参画して以来、利用組合の本件施設の運営に係る費用の全てを負担し、利用組合の中心的な役割を担っていること、買受人が利用組合からマンゴーやパプリカの栽培を引き継ぐことにより、生産量の増加や農家戸数の拡大にもつながることから、農業振興に寄与することが期待できることなどを掲げており、買受人を契約の相手方と特定した随意契約には理由が認められる。また、契約手続についても、平成31年3月28日に市長決裁を経て、契約の方法を随意契約として決定し、同月29日に本件譲渡契約を締結しており、契約手続上も適正に行われている。

本件譲渡契約の締結については、以上のとおりであり、随意契約には理由が認められ、その契約手続にも公正さを疑わせるような具体的な事情も認められないことから、本件施設の譲渡契約を随意契約の方法により締結したことは、違法又は不当な契約の締結に当たるということはできない。

また、請求人は、随意契約にて譲渡された行為は公益性が一切認められないと主張しているが、随意契約の理由は、上述のとおり公益性が認められるから、請求人の主張には理由がない。

2  本件施設を10円で譲渡したことは、違法又は不当な財産の処分に当たるといえるかについて

監査委員は、不動産鑑定評価が一定の幅を有する場合があり得、国有財産の処分の場合において鑑定評価額を20パーセントの範囲で修正ができるとされているが、このような修正を行う要因となる需給の状況等を把握することができないから、鑑定評価額の修正は行わず、鑑定評価額1,680,000円を「適正な対価」と判断する。

市長は、評価委員会から答申された評価額10円が著しく低廉な価格であることから、固定資産税仮評価額や公共用地の取得に伴う損失補償基準(昭和37年10月12日用地対策連絡会決定。)に基づく額と比較検討したり、外部の不動産鑑定士に本件施設の市場価値について意見を聴くなど、適正な対価について検討することも可能であったところ何ら検討を行っていない。また、買受人には、本件施設の譲渡予定額は評価委員会において算出される額とのみ通知しており、買受人との交渉の経緯により譲渡額が決定されていったという事実も見当たらない。よって、適正な対価よりも著しく低廉な価格で譲渡するだけの特段の事情も認められず、議会の理解も得られているとはいえないのであるから、市長が10円で本件施設の譲渡契約を締結したことは、市長に委ねられた裁量権を逸脱したものといわざるを得ず、地方自治法第237条第2項に反する違法があったものと解される。

したがって、本件施設を10円で譲渡したことは、違法な財産の処分に当たると判断する。

3   本件施設の譲渡に当たり議会の議決を経なかったことは、違法又は不当な財産の処分に当たるといえるかについて

市議会においては、五島市玉之浦花き栽培施設条例を廃止する条例及び「玉之浦花き栽培施設10円譲渡の解明」に関する陳情について審議されているものの、それらの審議状況からして、本件施設の譲渡に当たり、譲渡額10円と不動産鑑定士による鑑定価格や評価基準で示しているその他の算定方法による価格を比較して、「適正な対価」について審議がされていると認めることはできず、本件施設の譲渡額に加えてそれが適正であるか否かを判定するために参照すべき価格が提示され、両者の間に大きなかい離があることを踏まえつつ当該譲渡を行う必要性と妥当性について審議がされた上でこれを認める議決がされるなど、審議の実態に即して、当該譲渡が適正な対価によらないものであることを前提として審議がされた上これを認める趣旨の議決がされたと解することはできないから、本件施設を適正な対価なくして譲渡することについて、地方自治法第237条第2項の議決を経たということはできない。

よって、本件施設の譲渡に当たり議会の議決を経なかったことは、違法な財産の処分に当たると判断する。

4   市に損害が発生しているといえるかについて

本件施設を10円で譲渡することについては、2に記載のとおり、本件施設の譲渡額が「適正な対価」とは認めがたいから、地方自治法第237条第2項及び第96条第1項第6号の規定により、議会の議決が必要であった。しかしながら、本件施設の譲渡に当たっては、議会の議決を経ていないから、譲渡額10円と適正な対価である不動産鑑定評価額1,680,000円との差額1,679,990円が市に発生している損害となる。

本件施設の譲渡契約の締結については、市長の決裁となっている。市は、本件施設の譲渡に当たっては、本件施設が利用できなくなれば、賃借土地は返還することになり、返還の際には賃借土地を原状に回復するため本件施設の解体費用が発生することから、民間譲渡を進めるべきとの判断に至ったとしているが、これらの事情を考慮したとしても、議会の議決による場合でなければ、適正な対価なくして譲渡してはならないのであるから、市長が譲渡額10円で本件施設について本件譲渡契約を締結したことは、市長に委ねられた裁量権を逸脱したものといわざるを得ず、地方自治法第237条第2項に反する違法があったものと認められる。

したがって、市長は、市が被った損害につき賠償責任を負うものである。

5   本件譲渡契約が無効であるといえるかについて

本件譲渡契約締結における財務会計上の行為に違法な点はないこと、また、契約締結前に買受人に譲渡予定額を具体的に提示していないことから、随意契約の制限に関する法令に違反しているという事実は認められない。そして、本件譲渡契約は本件施設の譲渡に当たって事前に議会の議決に付していないため、地方自治法第237条第2項の規定により違法ではあるが、上記判例に照らして、無効であるということはできないと判断する。

なお、議会の議決を要する事項につき、議会の議決なくしてなされた行為は無効とする判例(最高裁判所昭和35年7月1日第二小法廷判決)があるが、この判例は、地方自治体の長がなした違法な公金の支出に関するもので、その支出行為自体議会の議決の有無にかかわらず、本来違法であるとしているのに対し、本件譲渡契約は地方自治法第96条第1項第6号及び第237条第2項の規定からみて、議会の議決(その事前、事後を問わない)があれば当然に適法行為とされる場合であるから、この判例は本件とはその事例を異にするので、本件譲渡契約には援用できない。

6   本件譲渡契約の追認について

本件施設の譲渡については、3で述べたとおり、地方自治法第237条第2項及び第96条第1項の規定により、議会の議決を必要とするから、本件施設を適正な対価なくして譲渡したことについて、議会の議決(追認)を経たときは、これらの規定による議決を欠いた瑕疵は治癒されることとなる。

7   結論

以上のとおり、市長が本件施設を10円で譲渡したことは、違法又は不当な財産の処分に当たるか検討した結果、1随意契約にて譲渡された行為は公益性が一切認められないと主張している部分及び5本件施設の譲渡に当たって、公正公平な手続きの手順を踏んでいないから本件施設の譲渡契約が無効であると主張している部分は、棄却することとし、本件施設の譲渡額10円は、適正な対価と認められず、議会の議決を経ていないので、違法な財産の処分に当たり市に損害が生じていることから、請求人の主張の一部には理由があると判断した。

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このページに関する問い合わせ先

監査委員事務局 監査係

郵便番号:853-8501
長崎県五島市福江町1番1号(本庁舎)

直通電話:0959-72-6152
ファクス番号:0959-74-1994(代表)

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