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温泉の使用に伴う損害の補塡を求める措置請求

更新日:2020年9月9日

公表日

令和2年9月8日

結果

棄却

監査結果の詳細

請求日

令和2年7月10日

請求の要旨

請求の理由

ア   旧玉之浦花き栽培施設(以下「本件施設」という。)は、平成31年3月29日に五島市から株式会社HPIファーム代表取締役今村勇雄(以下「本件施設所有者」という。)に売却されており、同年4月1日から令和4年3月31日までの間(本件施設を使用して営農活動を行う期間に限る。)は、丹奈温泉源(坑井)(以下「本件温泉権」という。)を無償で使用させている。本件温泉権は、市所有の財産であり、市民の共有財産である。市は、本件温泉権を本件施設所有者に地方自治法(昭和22年法律第67号)第96条第1項第6号に規定する議会の議決を経ずに貸し付けており、また、平成31年3月29日に市と本件施設所有者との間で締結された市有財産売買契約(以下「本件契約」という。)によって本件温泉権を本件施設所有者に無償で使用させていることは、五島市長の裁量権の逸脱に当たり違法なものであり、市は財産の管理を怠っている。
イ   市が本件施設所有者に本件温泉権を無償で使用させていることは、五島市行政財産使用料条例(平成16年五島市条例第81号。以下「行政財産使用料条例」という。)第4条に規定する、公用若しくは公共用又は公益事業の用に使用するときには該当せず、市長が特別の理由があると認める理由も乏しいため、営利企業への利益供与に当たる。よって、市は、行政財産使用料条例に違反している。
ウ   本件温泉権の使用は利益を生むためのものであるから、本件施設所有者から使用料を徴収する必要がある。本件温泉権の使用については、温泉権利用契約が必要なのであり、市は公金の賦課又は徴収を怠っており、無償供給という点で市に損害を与えている。

請求の内容

地方自治法第236条第1項に沿って、本件施設の利用者及び本件施設所有者に対し、「湧出量240リットル/分×60分×24時間×365日」により算出した適正な対価を請求し、市に納付させること。

監査の結果

監査委員の判断

本件請求には理由がないと認め、棄却しました。

判断の理由

1   市が本件契約により本件温泉権を無償で使用させていることは、違法又は不当な契約の締結に当たるかについて

請求人は、本件契約により本件温泉権を本件施設所有者に無償で使用させていることは、違法又は不当な契約の締結に当たると主張するので、違法又は不当な契約の締結について検討する。

地方自治法第242条第1項は、普通地方公共団体の住民は、当該普通地方公共団体の執行機関又は職員について、違法若しくは不当な公金の支出、財産の取得、管理若しくは処分、契約の締結若しくは履行若しくは債務その他の義務の負担(以下「財務会計上の行為」という。)があると認めるとき、又は違法若しくは不当に公金の賦課若しくは徴収若しくは財産の管理を怠る事実(以下「怠る事実」という。)があると認めるときは、これらを証する書面を添え、監査委員に対し、監査を求め、必要な措置を講ずべきことを請求することができる旨規定し、同条第2項は、当該財務会計上の行為があった日又は終わった日から1年を経過したときは、正当な理由があるときを除き、住民監査請求をすることができない旨規定している。

このような請求期間の制限は、普通地方公共団体の執行機関又は職員の財務会計上の行為は、たとえそれが違法又は不当なものであったとしても、いつまでも監査請求の対象となり得るとしておくことが法的安定性を損ない好ましくないとして定められたものである。しかしながら、当該財務会計上の行為が極めて秘密裡にされ、1年を経過してから初めて明らかになった場合など、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査したとしても、客観的にみて当該財務会計上の行為を知ることができない場合についてまで、その趣旨を貫くことは相当でないから、正当な理由があるときは、例外として、当該財務会計上の行為のあった日又は終わった日から1年を経過した後であっても、当該財務会計上の行為を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をすることができるとされている(最高裁判所昭和63年4月22日第二小法廷判決)。

また、盛岡地方裁判所平成12年6月16日第2民事部判決は、「地方自治法第242条第2項本文が監査請求に期間制限を設けたのは、地方公共団体の執行機関・職員の財務会計上の行為は、たとえそれが違法・不当なものであったとしても、いつまでも監査請求ないし住民訴訟の対象となり得るとしておくことが法的安定性を損ない好ましくないとの趣旨にでたものであると解されるところ(最高裁判所昭和63年4月22日第二小法廷判決参照)、本件契約のような継続的契約については、長期間にわたってその締結の違法を主張することができるとすると、監査請求に期間制限を設けた法の趣旨が没却されることとなり、相当ではない。したがって、地方自治法第242条第2項にいう「当該行為の・・・終わった日」とは、行為自体が継続して行われる場合において、その終わった日を意味するものと解すべきである。

本件監査請求の対象とされている財務会計行為は、契約の締結という一時的な行為であるから、右「終わった日」とは、同条にいう「当該行為のあった日」即ち右契約の締結日というべきである。そうすると、右監査請求の期間は、右契約の締結日から起算するものと解するのが相当である。」と判示している。
そして、正当な理由の有無は、特段の事情のない限り、普通地方公共団体の住民が相当の注意力をもって調査すれば客観的にみて上記の程度に当該行為の存在及び内容を知ることができたと解される時から相当な期間内に監査請求をしたかどうかによって判断すべきものであるとされている(最高裁判所平成14年9月12日第一小法廷判決)。

これを本件についてみると、本件請求は、平成31年3月29日に締結された本件契約の締結が違法又は不当であるとしてなされたものであるところ、本件請求は令和2年7月10日になされているから、監査請求期間の起算日である本件契約の締結日から1年を経過した後になされたものである。
次に、正当な理由の有無について検討する。請求人は、令和元年10月8日に本件契約書の公文書開示請求書を市に提出し、市は、同年11月5日に本件契約書の写しを請求人に交付しているから、請求人は、令和2年3月27日に提出した住民監査請求において本件契約に関する請求を行うことができたものであるところ、当該請求を行っていない。そして、請求人は、当該住民監査請求の追記補足事項として、同年4月24日に「温泉利用料無償提供について」補足陳述を行っているが、請求書に記載する請求の要旨を超えていることを理由に監査の対象とはされなかった。

これらのことから、請求人は、本件契約が締結された日から1年以内に監査請求を行うことができたものであり、上記最高裁判例に照らして契約の締結日から1年を経過した後にされたことについて、正当な理由があるとはいえないから、本件契約の締結については、地方自治法第242条第2項に規定する監査請求期間を徒過してされたものである。

したがって、違法又は不当な契約の締結を対象とする本件請求は、地方自治法第242条に規定する要件を欠いているものである。

ところで、請求の理由アに記載のとおり、請求人は、市は財産の管理を怠っていると主張するから、不当利得返還請求権又は損害賠償請求権の不行使について検討する。

財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする住民監査請求において、右請求権が右財務会計上の行為のされた時点においてはいまだ発生しておらず、又はこれを行使することができない場合には、右実体法上の請求権が発生し、これを行使することができることになった日を基準として同項の規定を適用すべきものと解するのが相当であるとされている(最高裁判所平成9年1月28日第三小法廷判決)。

これを本件についてみると、本件契約は、その第16条において、本件施設所有者は、平成31年4月1日から令和4年3月31日までの間において営農活動を行う期間は本件温泉権を無償で使用することができると定めるから、不当利得返還請求権又は損害賠償請求権が発生し、これらを行使することができることになった日は、本件施設所有者が営農活動を行っていた期間(平成31年4月1日から本件請求がなされた令和2年7月10日まで)のいずれかの日となり、したがって、地方自治法第242条第2項に規定する監査請求期間を徒過していないことになるから、財産の管理を怠る事実を対象とする本件請求は、適法なものとなる。

ところで、本件温泉権は、本件温泉権の財産の分類についてに記載のとおり行政財産である。行政財産については、地方自治法第238条の4第1項に「行政財産は、次項から第4項までに定めるものを除くほか、これを貸し付け、交換し、売り払い、譲与し、出資の目的とし、若しくは信託し、又はこれに私権を設定することができない。」と、また同条第6項に「第1項の規定に違反する行為は、これを無効とする。」と規定されているから、本件契約は、違法・無効である。したがって、市には、本件温泉権の使用料を徴収する根拠がなく、市は、本件温泉権の管理についてに記載のとおり、本件温泉権に関する費用を支出していないから、市に損失及び損害は発生しておらず、不当利得返還請求権又は損害賠償請求権が生じているとはいえない。

2  市が地方自治法の規定により本件温泉権を無償で使用させていることは、違法又は不当に公金の賦課又は徴収を怠る事実に当たるかについて

請求人は、市が地方自治法の規定により本件温泉権を本件施設所有者に無償で使用させており、違法又は不当に公金の賦課又は徴収を怠っていると主張するので、次の点について検討する。

ア   本件温泉権の使用許可について
地方自治法は、行政財産について、第238条第3項において「公有財産は、これを行政財産と普通財産とに分類する。」と、同条第4項において「行政財産とは、普通地方公共団体において公用又は公共用に供し、又は供することと決定した財産をいい、普通財産とは、行政財産以外の一切の公有財産をいう。」と規定し、第238条の4第7項において「行政財産は、その用途又は目的を妨げない限度においてその使用を許可することができる。」と規定している。

これを本件についてみると、本件温泉権は、本件温泉権の財産の分類についてに記載のとおり、旧玉之浦町が地元関係者と「農、漁業者用以外には利用しない。」との確約をしており、本件施設の設置当初から農業用に使用され、現在も使用目的や使用状況は変わっていない。さらに、本件温泉権は、令和2年1月6日に行政財産として公有財産台帳に登載されている。したがって、本件温泉権の使用は、行政財産の用途又は目的に沿ったものであるから、地方自治法第238条の4第7項が定める行政財産の目的外使用には当たらない。

そして、本件温泉権の管理についてに記載のとおり、市は、本件温泉権の使用許可申請について、行政財産の用途又は目的に沿った使用であるにもかかわらず、公共的団体以外の民間企業等が営利目的で行政財産を使用する場合は、地方自治法第238条の4第7項に規定する行政財産の目的外使用に該当すると認識していたため、同項の規定による行政財産の目的外使用許可を行っている。さらには、市には温泉権の使用料の定めがなく、使用料が発生しないにもかかわらず、行政財産使用料条例に基づき使用料を免除している。

よって、市は、本件施設所有者に本件温泉権の用途又は目的に沿った許可を行っておらず、本件温泉権を本件施設所有者に正当な権原なく使用させているものである。

イ   本件温泉権を無償で使用させていることについて
地方自治法第225条は、「普通地方公共団体は、第238条の4第7項の規定による許可を受けてする行政財産の使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができる。」と規定し、普通地方公共団体が行政財産の目的外使用又は公の施設の利用につき使用料を徴収することができることを定めている。また、地方自治法第228条において、使用料に関する事項については、条例で定めなければならないと規定している。

これを本件についてみると、市は、本件施設所有者に行政財産使用料条例第4条に規定する「市長が特別の理由があると認めるとき」に基づき、本件温泉権の使用料を免除しているが、温泉権の使用料については、行政財産使用料条例は適用されない。また、仮に、温泉権の使用料について、行政財産使用料条例が適用されるとしても、行政財産使用料条例第2条は、土地及び建物の使用料を定めているが、温泉権についての使用料の定めはないから、使用料は発生せず、したがって使用料を免除することはできない。さらに、本件温泉権は、地方自治法第244条に規定する公の施設ではないから、公の施設の利用料として徴収することもできない。

したがって、市には、本件温泉権の使用料を徴収する根拠がないから、市が本件温泉権を本件施設所有者に無償で使用させていることが公金の賦課又は徴収を怠る事実に当たるとはいえない。

3   本件温泉権を無償で使用させていることにより、市に損害が生じているかについて

1又は2によって、市に損害が生じているか検討する。

福岡地方裁判所平成5年8月5日第1民事部判決は、「住民監査請求の制度は、普通地方公共団体の財政の腐敗防止を図り、住民全体の利益を確保する見地から、当該普通地方公共団体の長その他の財務会計職員の違法若しくは不当な財務会計上の行為又は怠る事実について、その監査と予防、是正等の措置とを監査委員に請求する権能を住民に与えたものであって、住民訴訟の前置手続として、まず当該地方公共団体の監査委員に住民の請求に係る行為又は怠る事実について監査の機会を与え、当該行為又は怠る事実の違法、不当を当該地方公共団体の自治的、内部的処理によって予防、是正させることを目的とするものであると解される。そのため、監査の対象となる行為等は、地方公共団体に積極消極の損害を与えひいては住民全体の利益に反するものでなければならないというべきである。」と判示している。

これを本件についてみると、本件温泉権を本件施設所有者に無償で使用させていることについては、1及び2イに記載のとおり、市には本件温泉権の使用料を徴収する根拠がなく、市は、本件温泉権の管理についてに記載のとおり、本件温泉権に関する費用を支出していないから、市に損失及び損害は発生しておらず、したがって、不当利得返還請求権又は損害賠償請求権が生じているとはいえない。

なお、請求人は、監査委員に求める措置において、本件施設の「利用者及び所有者」に対して請求し、市に納付させることを求めているが、本件施設の利用者及び所有者は、本件施設所有者であるから、同一の者となる。

4   結論

以上のとおり、1の市が本件契約により本件温泉権を無償で使用させていることは、違法又は不当な契約の締結に当たるかについて及び2の市が地方自治法の規定により本件温泉権を無償で使用させていることは、違法又は不当に公金の賦課又は徴収を怠る事実に当たるかについて検討した結果、1のうちの違法又は不当な契約の締結を対象とする部分については、地方自治法第242条に規定する要件を欠いているから却下することとし、1のうちの財務会計上の行為が違法、無効であることに基づいて発生する実体法上の請求権の不行使をもって財産の管理を怠る事実とする部分及び2の違法又は不当に公金の賦課又は徴収を怠る事実に当たるかについては、違法又は不当に財産の管理又は公金の賦課若しくは徴収を怠っているとは認められず、市に損失及び損害は生じていないことから、請求人の主張には理由がないと判断した。

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このページに関する問い合わせ先

監査委員事務局 監査係

郵便番号:853-8501
長崎県五島市福江町1番1号(本庁舎)

直通電話:0959-72-6152
ファクス番号:0959-74-1994(代表)

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