介護給付費の返還を求める措置請求
更新日:2025年7月3日
公表日
令和7年6月27日
結果
棄却
監査結果の詳細
請求日
令和7年4月30日
請求の要旨
請求の理由
- ア 五島市は2024年8月審査分の介護給付費2,726,235円をグループホームAに支払った。しかし、グループホームAの夜勤職員が、2024年7月の夜勤中に外部者を施設に招き入れ、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づく運営基準(24時間常時対応義務)を故意に損なう行為を行った。この時間帯のサービス提供は不十分であり、該当する給付費51,300円及び利息2,997円(2024年8月~2025年10月、年利5%)の支払は「不当な公金支出」に該当する。
- イ 五島市は、グループホームAが適切なサービスを提供した前提で給付費を支払った。外部者の滞在によりサービス提供体制が損なわれた時間帯(14時間)の請求は合理性を欠き、不当支出に該当する。更に、市長寿介護課は請求人から指摘を受けながらも、調査は形式上に留まり再調査を求める。
- ウ グループホームAが外部者の滞在によりサービスが不十分な時間帯(14時間)を含む報告書を提出し、給付費を請求したことは、不当請求に該当する。
- エ グループホームAは、利用者との契約(重要事項説明書で約束された24時間介護体制)を履行せず、外部者の滞在により即時対応義務を怠った。
- オ グループホームAがサービス未提供分の51,300円を受領したことは不当利得に該当し、虚偽報告の可能性から悪意が推定され、利息2,997円の返還義務は生じる。
請求の内容
- ア グループホームAに対し、51,300円及び利息2,997円の返還を命じること。
- イ グループホームAに対し、運営基準違反の是正を求める改善命令を発出すること。
- ウ グループホームAの運営者に対し、夜勤中の外部者立ち入り禁止ルールの徹底、職員教育、監視体制の強化を求める行政指導を行うこと。
- エ 介護給付費の支払いプロセスの見直しを指示し、事業者のサービス実態検証を強化すること。
- オ グループホームAの違反行為について、長崎県に対し、介護保険法第77条(罰金)または第115条の45(指定取消)の適用を検討する調査を要請すること。
監査の結果
監査委員の判断
本件請求には理由がないと認め、棄却しました。
判断の理由
1 五島市は2024年8月審査分の介護給付費2,726,235円をグループホームAに支払った事実はあるといえるかについて
請求人は、「五島市は2024年8月審査分の介護給付費2,726,235円をグループホームAに支払った。」と主張するので検討する。なお、請求人が用いる「介護給付費」は、1の(1)の「地域密着型介護サービス費」と同一であるとして検討を進める。
グループホームAは、五島市の指定を受けて平成26年9月1日から地域密着型サービス事業を行う指定地域密着型サービス事業者である。利用者が地域密着型サービスを受けたときは、五島市は利用者に対して地域密着型介護サービス費を支給する。
グループホームAは、2024年7月に提供した地域密着型サービス(認知症対応型生活介護)分の地域密着型介護サービス費を利用者に代わり連合会に請求した。
連合会は、五島市の2024年7月分の介護給付費(地域密着型介護サービス費を含む介護保険からサービス事業者に支払われる介護報酬をいう。以下同じ。)の請求を取りまとめ、審査後に本件請求分を含む五島市の介護給付費及び審査支払手数料の総額447,030,939円を五島市に請求した。
五島市は連合会からの請求を受けて、五島市財務規則(平成16年五島市規則第43号。以下「財務規則」という。)に基づいて支出伝票の処理を行い、連合会へ447,030,939円を支払った。
以上の介護給付費の請求の流れは、事実証明1における給付費の請求及び給付費の支払に整合する。
したがって、請求人が主張する「五島市は2024年8月審査分の介護給付費2,726,235円をグループホームAに支払った。」という事実は確認されなかった。
2 本件介護給付費の支出は、不当な財務会計上の行為に当たるかについて
請求人は、「グループホームAの夜勤職員が、2024年7月の夜勤中に外部者を施設に招き入れ、介護保険法に基づく運営基準(24時間常時対応義務)を故意に損なう行為を行った。この時間帯のサービス提供は不十分であり、該当する給付費51,300円及び利息2,997円(2024年8月~2025年10月、年利5%)の支払は「不当な公金支出」に該当する。」と主張するが、⑴において、五島市がグループホームAに対して介護給付費を支出した事実は確認されなかったことから、五島市が連合会に介護給付費を支出したことが「不当な公金支出」となるかについて検討する。
五島市は、長崎県国民健康保険団体連合会介護給付費審査支払規則第2条第1項の規定により、平成18年4月3日付けで介護給付費の審査及び支払について連合会に委託した。
したがって、本件支出は、当該委託契約に基づき支出されたことは明らかであり、財務規則に定める手続にのっとり適正に処理されていると認められることから、不当な財務会計上の行為には当たらない。
仮に、請求人が主張する「サービス提供は不十分であり、不当な公金支出に該当する。」が事実であったとしても、当該事実は、直接的な財務会計上の行為ではなく、間接的に財務会計上の行為に影響を及ぼすに過ぎない。
そのような間接的に影響を及ぼす行為が財務会計上の行為に当たるかという点に関して、最高裁は「地方自治法第242条の2所定のいわゆる住民訴訟の対象となるものは同法第242条第1項所定の地方公共団体の執行機関又は職員による同項所定の一定の財務会計上の違法な行為又は怠る事実に限られる。」として、直接的な財務会計上の行為に限る旨の判断をしている。(最判昭和51年3月30日裁判集民117号337頁)
したがって、仮に請求人が主張するサービス提供が不十分という事実があったとしても、請求人が主張する介護給付費の支出は、不当な財務会計上の行為に当たるということはできない。
3 請求人が主張する51,300円及び利息2,997円は、市の損害といえるかについて
請求人は、「グループホームAがサービス未提供分の51,300円を受領したことは不当利得に該当し、虚偽報告の可能性から悪意が推定され、利息2,997円の返還義務は生じる。」と主張するので検討する。
介護給付費は、保険者である五島市が利用者に対して介護保険法が定めるサービスの公的給付として支給するものであり、2024年8月審査分の介護給付費は、五島市と委託契約を締結した連合会から、利用者から代理受領を委任されたグループホームAに支給されたものである。
グループホームAに入所する利用者が2024年7月に地域密着型サービスを利用していることは、請求人提出の事実証明3(介護給付費給付実績明細書)から明らかであり、請求人が主張するサービス未提供分の51,300円を受領したことは不当利得に該当するということはできない。また、利息2,997円の返還義務は生じない。
したがって、市に損害が生じているとはいえない。
4 結論
以上のとおり、グループホームAの提供した地域密着型サービスにおける介護給付費に係る公金の支出が不当な財務会計上の行為に当たるかについて検討したが、市職員による違法又は不当な財務会計上の行為は認められず、市に損害も生じていないことから、請求人の主張には理由がないと判断した。
PDF形式のファイルをご覧いただくためには、アドビシステムズ社のAdobe Readerが必要です。Adobe Readerがインストールされていない場合は、Adobe Readerダウンロードページからダウンロードしてください。
このページに関する問い合わせ先
監査委員事務局 監査係
郵便番号:853-8501
長崎県五島市福江町1番1号(本庁舎)
直通電話:0959-72-6152
ファクス番号:0959-74-1994(代表)