令和6年度例月財務監査結果報告・措置状況(令和6年5月~7月分)
更新日:2025年4月22日
公表日
令和6年10月16日
措置状況公表日
- 令和7年4月16日(市長の部局)
監査結果・措置状況
監査の対象
一般会計、特別会計及び歳入歳出外現金並びに水道事業会計及び下水道会計の令和6年5月~7月分の収入及び支出に関する会計伝票
監査の主な実施内容
例月出納検査に併せて、毎月提出される会計伝票から抽出し、収入及び支出の有効性、効率性、経済性、合規性等の観点から監査した。
監査の結果
上記のとおり監査した限りにおいて、次の指導事項を除き、監査の対象となった財務に関する事務は法令に適合し、正確に行われ、最少の経費で最大の効果を挙げるようにしていることが認められた。
(1) 漁港施設の目的外使用について
産業振興部水産課
指導事項 | 講じた措置 |
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五島市漁港管理条例(平成16年五島市条例第194号。以下「漁港条例」という。)第14条第1項第2号の規定による甲種漁港施設の目的外使用について、次のような事案があった。 (ア) 甲種漁港施設を当該漁港施設の目的以外の目的に使用しようとする者(以下「使用申請人A」という。)は、漁港条例第14条第1項第2号が「甲種漁港施設を当該漁港施設の目的以外の目的に使用しようとする者」は「市長の許可を受けなければならない。」と規定することから、使用期間を令和5年11月13日から令和6年3月29日までとする五島市漁港管理条例施行規則(平成16年五島市規則第174号。以下「漁港規則」という。)第11条の目的外使用許可申請書(以下「申請書」という。)を、令和5年11月10日付けで、産業振興部水産課(以下「水産課」という。)に提出した(以下この申請を「令和5年度申請」という。)。 水産課は、漁港条例第14条第2項が「市長は、前項の許可に漁港施設の維持管理上必要な条件を付することができる。」と規定することから、令和5年度申請について、「許可期間が満了したときは、……許可期間内に原形に復旧し、五島市長の検査を受けなければならない。」という条件を付して、令和5年11月10日に同日付けで、使用申請人Aに、漁港管理者である市長名による漁港施設使用許可書(以下「許可書」という。)を交付した(以下この許可を「令和5年度許可」といい、令和5年度許可を受けた使用申請人Aを「使用人A」という。)。 しかし、水産課の職員は、令和5年度申請が提出された時から令和5年度許可を行うまでの間に、令和5年度申請に係る漁港施設を確認しておらず、令和5年度許可による使用期間が満了したときにも、条件として付した検査を行っていない。 (イ) その後、使用人Aは、令和6年6月17日に、使用期間を許可日(申請書の日付及び使用人Aの口述から、これを同年4月1日とみなす。)から同年6月29日までとする同年4月1日付けの申請書を水産課に提出した(以下この申請を「令和6年度申請」という。)。水産課によると、使用人Aは、受注した工事の現場事務所及び資材仮置き場として令和5年度許可に係る漁港施設を使用していたが、工事の工期が延長されたことから、令和5年度許可による使用期間が過ぎた後も同施設を使用していたにもかかわらず、申請書の提出が遅れてしまったということであった。 水産課は、令和6年度申請について、令和5年度許可と同様の条件を付して、使用期間を令和6年4月1日から同年6月29日までとする許可書を、同年7月1日に同年4月1日付けで交付した(以下この許可を「令和6年度許可」という。)。 しかし、水産課の職員は、(ア)と同じく、令和6年度申請が提出された時から令和6年度許可を行うまでの間に、令和6年度申請に係る漁港施設を確認しておらず、令和6年度許可による使用期間が満了したときにも検査を行っていない。 ア (ア)及び(イ)について、水産課は、申請書が提出されたときは、当該申請に係る漁港施設を確認した上で漁港条例第14条第1項の許可の可否を判断するべきであり、当該許可による使用期間が満了したときは、同条第2項の規定に基づき付した条件に従って現況を確認するなどの検査を実施しなければならない。 イ (ア)及び(イ)から、使用人Aは、令和5年度許可による使用期間が満了した令和6年3月29日の翌日から、令和6年度申請に記載された使用期間の始期である同年4月1日の前日までの間、つまり、令和6年3月30日及び同月31日については、漁港条例第14条第1項の許可を受けずに、令和5年度許可に係る漁港施設と同じ場所を使用していたこと(以下この使用を「令和5年度無許可使用」という。)となる。しかし、水産課の職員は、職務懈怠により令和5年度無許可使用の事実を確認していない。 もっとも、令和5年度申請及び令和6年度申請の申請人、使用場所、使用面積及び申請目的が同一であること、並びに当該同一の目的からして、令和6年3月30日及び同月31日に使用の目的物を撤去する理由がないという状況、加えて使用人Aの口述内容を考慮すると、使用人Aの令和5年度無許可使用が推認される。 ウ (イ)について、使用期間を令和6年4月1日から同年6月29日までとする同年4月1日付けの令和6年度申請は、同年6月17日に水産課に提出されているところ、漁港条例第14条第1項第2号は「甲種漁港施設を当該漁港施設の目的以外の目的に使用しようとする者」は「市長の許可を受けなければならない。」と規定するから、少なくとも、令和6年度申請が水産課に提出された同年6月17日より前の期間、つまり、同年4月1日から同年6月16日までの間は、同項の許可の申請を行わずに令和5年度許可に係る漁港施設と同じ場所を使用したこと(以下この使用を「令和6年度未申請使用」という。)が、イと同様に推認される。 しかし、(イ)のとおり、水産課の職員は、職務懈怠により令和6年度未申請使用の事実を確認していない。 エ (イ)について、令和6年度許可の許可書の日付は、五島市文書管理規則(平成16年五島市規則第11号)第32条が「施行する文書の日付は、発送する日を用いるものとする。」と規定するから、令和6年度申請に係る漁港条例第14条第1項の許可について市長の決裁を経て許可書を交付する日、すなわち、令和6年7月1日とすべきであり、令和6年度申請と同日の同年4月1日付けとすることはできない。 なお、文書の日付(施行日)を遡ったとしても、意思表示の効力発生時期について民法(明治29年法律第89号)第97条第1項が「意思表示は、その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」と規定するから、本件行政処分である漁港条例第14条第1項の許可処分の効力の発生の時期は、令和6年度許可の許可書が使用人Aに到達した時(令和6年7月1日)となる(最高裁判所昭和29年8月24日第三小法廷判決最高裁判所昭和57年7月15日第一小法廷判決最高裁判所平成11年10月22日第二小法廷判決 参照)。 オ 漁港条例第14条第1項及び漁港規則第10条第1項は、甲種漁港施設を使用する前に申請書を提出して、市長の許可を受けなければならないと規定するところ、(イ)のとおり、使用人Aは、令和6年6月17日に、使用期間を同年4月1日から同年6月29日までとする同年4月1日付けの申請書を水産課に提出し(申請書には、同日付けの受付印が押印されている。)、これについて、水産課は、同年7月1日に同年4月1日付けで、許可書を交付した(エにより、その許可処分の効力は、同年7月1日に生じた。)。すなわち、使用期間(同年4月1日から同年6月29日まで)が過ぎてしまった後(同年7月1日)に許可書を交付するという、漁港条例が許容しない、明らかに違法な行政処分となっている。 これについては、行政処分は法定手続に従って行われなければならず、事後的に遡って効力を与えることは認められていないから、令和6年度許可は、行政処分としての効力はない、すなわち、当然無効であると解する。 仮に、市長は令和6年度許可を取り消していないから、令和6年度許可は、行政処分の公定力により令和6年度申請の使用期間における甲種漁港施設の目的外使用について効力を有するとしても、令和6年度未申請使用の期間(令和6年4月1日から同年6月16日まで)については、ウに記載のとおり、明らかに漁港条例第14条第1項の規定に違反しており行政処分の効力はないから、公定力は及ばないと解することができる。そうすると、この期間に相当する使用料は生じないから、使用人Aに返還しなければならないこととなり(漁港条例第17条第3項の規定により返還しないこともできる。)、後に述べる不法行為による損害賠償請求権及び不当利得返還請求権に基づく使用料相当額の請求の問題、漁港条例第24条又は第25条に規定する罰則の問題を生じることとなる。 あるいは、許可書は、使用期間を「令和6年4月1日から同年6月29日まで」と記載し、令和6年度未申請使用の期間を含んでいるから、使用人Aの漁港条例第14条第1項の規定による市長の許可を受けていないという瑕疵は治癒したと解することもできる。この場合には、不法行為による損害賠償請求権及び不当利得返還請求権に基づく使用料相当額の請求問題、漁港条例第24条又は第25条に規定する罰則の問題を生じないこととなる。 そこで、実務上は、令和6年度許可の使用期間の全てについて行政処分の公定力があると解することとなるのであろう。そうであれば、以後、クを除き、令和6年度未申請使用については、論じないこととする。 カ 次に、使用人Aの令和5年度無許可使用は、市長の許可なくした行為であるから、漁港条例に違反し不法に漁港施設を使用している(以下この使用を「不法使用」という。)。 これにより、市は、令和5年度無許可使用に係る使用人A(以下「令和5年度無許可使用人A」という。)に対して、漁港施設の不法使用を理由に、不法行為による損害賠償請求権及び不当利得返還請求権に基づき使用料相当額を請求できることになる(大阪地方裁判所平成28年4月14日判決参照)。そして、最高裁判所平成16年4月23日第二小法廷判決は、客観的に存在する債権を理由もなく放置したり免除したりすることは許されず、原則として、地方公共団体の長にその行使又は不行使についての裁量はないとしているから、市長は、令和5年度無許可使用人Aに対して、漁港条例第17条第1項の規定による使用料に相当する額を請求しなければならない。 キ 漁港条例第24条は、「次の各号のいずれかに該当する者は、5万円以下の過料に処する。」と規定し、その第4号に「第14条第1項の規定に違反した者」を掲げるから、令和5年度無許可使用人Aは、第24条の規定に抵触し、カによる使用料に相当する額も納入していないから、「詐欺その他不正の行為により利用料等の徴収を免れた者は、その徴収を免れた金額の5倍に相当する金額(当該5倍に相当する金額が5万円を超えないときは、5万円とする。)以下の過料に処する。」と規定する第25条の規定にも抵触している。 しかし、市長は、令和5年度無許可使用人Aに第24条の過料(以下「24条過料」という。)及び第25条の過料(以下これらを「本件過料」という。)を科しておらず、本件過料の処分について何も検討していない。水産課は、監査委員事務局の照会に対して、総務企画部総務課の見解(以下単に「見解」という。)として「過料を科すか否かについては、個々の事案の違反の内容、程度、影響等を総合的に勘案して判断されるもの」であると回答している。この見解のとおり、本件過料の処分は、市長の裁量行為であり、それであるからこそ、裁量権の逸脱・濫用が懸念されるから、各々の過料処分について何らかの基準(少なくとも、過料を科すか否かの一定の要件)があってしかるべきである。そしてこれらの基準は、市として整合性のとれた合理的なものでなければならない。 裁量権の逸脱・濫用に当たるかどうかの判断は、実体的審査と判断過程審査によりなされており、このうちの「実体的審査」の対象となるのは、平等原則違反、比例原則違反、信義則違反、重大な事実誤認、法律の目的違反・不正な動機によるものなどが挙げられ、「判断過程審査」の対象となるのは、他事考慮、考慮不尽などが挙げられるとされているので、これらも参考の上、市条例が定める過料処分の基準の整備について検討されたい。なお、この過料処分の基準の整備については、令和5年度五島市水道事業会計決算審査意見について(令和6年8月28日付け6五監第356号)において指摘を行ったところであるので、申し添える。 ク また、水産課は、監査委員事務局の照会に対して、令和6年度未申請使用について、24条過料を科していない理由を概ね「今回のみ申請書の提出が遅延し、現場確認を水産課の職員が行っていなかったこともあり、無許可使用人Aのみを責めることもできないため」と、24条過料を科さないと決定した経緯を「令和6年度申請があった令和6年6月17日に、水産課で協議した」と回答している。 しかし、五島市文書管理規則第4条が「事務は、文書によって処理することを原則とする。」と事務処理の原則をうたっているにもかかわらず、24条過料を科さないと決定したこと、並びにその理由及び経緯は文書化されておらず、市民に対する説明責任を果たすことができない状況となっている。 この文書主義の原則の遵守については、住民監査請求についての監査結果(令和4年4月22日付け五島市監査委員公表第14号)において意見を付し、令和5年度定期監査結果報告(令和6年2月28日付け5五監第691号)において指摘を行ったところであるが、情報が共有されていないと言わざるを得ない。 よって、行政機関の意思決定及び事務事業の実績に関する文書主義の原則について、周知徹底されたい。 |
アの申請書が提出されたときは、申請場所を確認した上で許可の可否を判断し、許可による使用期間が満了したときは、原形復旧の現況を確認するなど適切な検査を行ってまいります。 |
(2) 変更契約書の作成について
水道局水道課
指導事項 | 講じた措置 |
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令和6年3月26日、水道局水道課(以下「水道課」という。)は、残留塩素測定試薬を購入するため、業者Bと業者Cの2者に見積提出依頼書を送付した。 同年4月11日、水道課は、当該2者から見積書を徴した結果、業者Bを請負業者に決定した。その際、納入期限を同月19日とする契約を締結し、請書を徴取している。 同月18日、業者Bは、請書に記載した納入期限(同月19日)までの納入が困難となったことから、納入期限を同年5月24日に変更したい旨の納期変更願を水道課に提出した。水道課の職員は、これを受けて、業者Bに対して納入期限を同日に変更することを了承する旨口頭で伝えた。 この一連のやり取りにおいて、水道課は、提出された納期変更願に受付印を押印せず、供覧も行っていない。また、納入期限の変更を認める決裁文書も作成していないのであるから、納入期限が変更されたことを証する変更請書も徴取していない。 ところで、五島市水道事業会計規程(平成16年五島市水道事業管理規程第12号)第26条第1項は、「水道課長は、支出の原因となるべき契約その他の行為については、あらかじめ文書によって管理者の決裁を受けるとともに、支出予算執行整理簿に記帳しなければならない。」と規定し、同規程第98条は、「水道事業の業務に係る契約に関しては、法令その他別に定めるもののほか、五島市財務規則(平成16年五島市規則第43号)第5章……の規定を準用する。」と規定している。 ここにおいて準用する五島市財務規則(以下「財務規則」という。)第90条は、「契約担任者が、契約をしようとするときは、おおむね次に掲げる事項を記載した契約書を作成しなければならない。」と規定し、その第3号において履行期限を掲げて契約書に履行期限を記載するよう求めている。さらに、財務規則第91条第1項 は、契約書の特例として、一定の条件を満たす場合においては、請書又は承諾書をもって前条(第90条)の契約書に代えることができると規定している。 これを本件についてみると、水道課は、契約書に代えて請書を徴取していることから、納入期限の変更についても変更請書を徴取すべきであった。また、契約書等の内容を変更するときは、契約担任者の意思を最終的に決定するため、文書によって決裁を受けるべきである。そして、新たな債務の根拠を明らかにし、後の紛争を避けるためにも、契約書等に記載された履行期限の変更は書面によるべきである。今後は、このようなことがないよう、五島市水道事業会計規程にのっとり、適正な事務処理に努められたい。 |
今後は、五島市水道事業会計規程第26条第1項及び98条並びに五島市財務規則にのっとり、納入期限など契約書等の内容を変更するときは、文書によって決裁を受け、契約書等の記載事項の変更は書面で行うよう、適正な事務処理を行ってまいります。 |
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監査委員事務局 監査係
郵便番号:853-8501
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ファクス番号:0959-74-1994(代表)